一般社団法人の法人税は、「非営利型法人」の要件を満たすかどうかで変わります。満たせば、法人税がかかるのは収益事業の所得だけ。満たさなければ「普通法人」として、株式会社と同じようにすべての所得にかかります。ただし、クリニックが行う医療(医療保健業)は、原則として収益事業に当たります。非営利型にしても、診療で得た所得には法人税がかかると考えて設計します。
この記事では、非営利型と普通法人の違い、非営利型になるための要件、クリニックを開設するときの選び方を整理します。税務の判断は税理士に確かめてください。
一般社団法人の税金は、何で決まるのか
| 区分 | 法人税がかかる所得 | 根拠 |
|---|---|---|
| 非営利型法人 | 収益事業から生じた所得だけ。会費や寄附など、収益事業でない所得にはかからない | 法人税法 第2条第6号・第9号の2、第4条第1項 |
| 普通法人 | すべての所得。株式会社と同じ扱い | 同 第2条第9号 |
非営利型法人は、法人税法では「公益法人等」の1つとして扱われます。どちらになるかは届け出で選ぶのではなく、定款と理事の構成が要件に合っているかどうかで決まります。
クリニックの医療は、収益事業になるのか
なります。法人税法の収益事業は、政令で決められた事業を、継続して事業場を設けて行うものです(法人税法 第2条第13号)。その中に「医療保健業」が入っています(同法施行令 第5条第1項第29号)。
| 所得 | 非営利型で開設した場合 |
|---|---|
| 診療(保険・自由診療) | 医療保健業として、法人税がかかる |
| 物販(化粧品・サプリメントなど) | 物品販売業として、法人税がかかる |
| 会費・寄附 | 収益事業でなければ、かからない |
医療保健業には例外もありますが、日本赤十字社や社会医療法人などの法人の種類によるものか、診療報酬の額が低廉であることなど財務省令の要件を満たす場合に限られます。通常の保険診療や自由診療を行うクリニックを前提にするなら、非営利型にしても診療の所得は課税されると考えておきます。
非営利型法人になるには、どんな要件があるのか
非営利型法人には2つの型があります。クリニックの開設で検討するのは、ふつう「非営利性が徹底された法人」のほうです。もう1つの「共益的活動を目的とする法人」は、会員に共通する利益を図ることが主な目的で、主な事業として収益事業を行っていないことが要件なので、クリニックの運営には合いません。
| 要件 | 中身 |
|---|---|
| 剰余金 | 定款に、剰余金の分配を行わない旨の定めがある |
| 残余財産 | 定款に、解散したときの残余財産が国・地方公共団体・公益法人などに帰属する旨の定めがある |
| 特別の利益 | 上の定めに反して、特定の個人や団体に特別の利益を与えることを決めたり、与えたりしたことがない |
| 理事の構成 | どの理事についても、その理事と配偶者・3親等以内の親族などである理事の合計が、理事総数の3分の1以下 |
根拠は法人税法施行令 第3条第1項です。4つの要件は、すべて満たしている必要があります。とくに理事の構成は、クリニックの体制づくりに直接効きます。たとえば夫婦と子の3人を理事にすると、親族の理事が3分の1を超えるので要件を満たしません。理事を何人置き、誰に頼むかは一般社団法人の設立手続きに書きました。
保健所が見る「非営利性」と、税金の「非営利型」は同じものか
同じではありません。見る人も、根拠の法律も違います。
| 保健所の非営利性 | 税金の非営利型法人 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 医療法 第7条第7項(営利を目的とする者には開設の許可を与えないことができる) | 法人税法 第2条第9号の2、同法施行令 第3条 |
| 見る人 | 保健所(開設の許可) | 税務署(法人税) |
| 満たさないと | 診療所の開設許可が下りない | 普通法人として、すべての所得に法人税がかかる |
つまり、普通法人の一般社団法人でも、保健所に非営利性を説明できればクリニックは開設できます。反対に、税金の上で非営利型にしても、定款・役員・資金の流れの説明が足りなければ開設の許可は下りません。保健所が何を見るかは一般社団法人でクリニックを開くデメリットに書きました。
クリニックを開くなら、非営利型と普通法人のどちらにするのか
診療の所得はどちらでも課税されるので、税金の差だけで決めるものではありません。理事の構成と、定款に書く残余財産の行き先をどうしたいかで決めます。
| 考えること | 非営利型にする場合 | 普通法人にする場合 |
|---|---|---|
| 理事 | 親族などの理事を3分の1以下に抑える | この制限は無い |
| 残余財産 | 解散したら国・公益法人などに帰属させる | 国などへの帰属を定める必要は無い(ただし、社員に分配を受ける権利を与える定めは効力を持たない) |
| 会費・寄附などの収入 | 収益事業でなければ課税されない | 課税される |
| 途中で要件を外れたら | 普通法人になり、それまでの収益事業以外の所得の累積額に課税されることがある(法人税法 第64条の4) | — |
どちらの型でも、一般社団法人では社員に剰余金を分配する定めは効力を持ちません(一般社団法人法 第11条第2項)。医療以外の事業や出資した人への見返りを考えるなら、別の会社を組み合わせる方法もあります。MS法人とはにまとめました。
非営利型にするかどうかを、法人の設計と一緒に決めます
理事の構成、定款の剰余金と残余財産の定め。ここは税金と保健所の両方に効くので、設立の前に決めておくと、あとから定款や役員を組み直さずに済みます。
- 定款・社員と理事の構成を、開設後の運営まで含めて一緒に決めます
- 保健所への申請の書類を整理し、折衝にも同席します
- 税務の判断と申告は、提携する税理士が担当します
非営利型にするか決めていない段階でも構いません。
よくある質問
一般社団法人なら、クリニックの所得に法人税はかかりませんか
かかります。非営利型法人でも、医療保健業は収益事業に当たるため、診療で得た所得には法人税がかかります(法人税法施行令 第5条第1項第29号)。普通法人の場合は、すべての所得にかかります。
非営利型法人になるための届け出はありますか
非営利型かどうかは、選んで届け出るものではなく、定款の定めと理事の構成が要件をすべて満たしているかで決まります。設立や変更のときの税務署への届け出の内容は、税理士に確かめてください。
家族だけで理事を固めても、非営利型になれますか
なれません。どの理事についても、本人と配偶者・3親等以内の親族などである理事の合計が、理事総数の3分の1以下である必要があります(法人税法施行令 第3条第1項第4号)。
普通法人の一般社団法人でも、クリニックを開設できますか
税金の区分と開設の許可は別のものです。保健所は医療法にもとづいて、定款・役員の構成・資金の流れから営利を目的としていないかを確かめます。税金の上で普通法人であることだけで、開設できないことにはなりません。
関連ページ
参考:法人税法 第2条第6号・第9号・第9号の2・第13号、第4条第1項、第64条の4、法人税法施行令 第3条・第5条第1項第29号、医療法 第7条第7項、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第11条第2項(e-Gov法令検索、2026年11月1日確認)。税務の取り扱いは個別の事情で変わります。具体的な判断は税理士にご確認ください。

