自由診療のクリニックも、開業の手続きは保険診療のクリニックと大きくは変わりません。違いが出るのは、手続きよりも「お金の入り方」「広告のルール」「集客を誰が回すか」の3つです。保険の指定を取らなければ地方厚生局への申請は要りませんが、そのかわり、患者さんを集めるところまで自分たちで組み立てる必要があります。
この記事では、自由診療で開業するときに保険診療と何が違うのか、保険の指定を取るかどうかの考え方、広告と美容医療で新しく求められていることを整理します。
自由診療のクリニック開業は、保険診療と何が違うのか
| 項目 | 保険診療が中心 | 自由診療が中心 |
|---|---|---|
| 開設の手続き | 保健所への届出(法人なら開設許可)+地方厚生局への保険医療機関の指定申請 | 保健所への届出(法人なら開設許可)。保険の指定を取らないなら、指定申請は要らない |
| お金の入り方 | 診療報酬の入金は約2か月後 | 窓口やオンラインで、その場で受け取る |
| 値段 | 国が決めた点数 | 自院で決める。値付けそのものが経営判断になる |
| 集客 | 立地と診療科で、ある程度見込める | 広告・Web・SNS・紹介で、自分たちで作る |
| 広告のルール | 医療広告ガイドライン | 医療広告ガイドライン。自由診療は費用やリスクの書き方に追加の条件がある |
入金が早いぶん、開業直後の資金繰りは保険診療より楽になります(資金の考え方はクリニックの開業資金で書いています)。一方で、広告費と、問い合わせから来院までを回す人の費用が、保険診療のクリニックより大きくなりやすいです。
自由診療だけでも、保険医療機関の指定は取るべきか
自由診療だけで始める場合でも、指定を取るかどうかは最初に決めておきます。あとから取ることもできますが、指定には締切と審査があり、取ると決めた月にすぐ保険診療を始められるわけではありません。
| 選び方 | 向いている場合 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 指定を取らない | 美容・AGAなど、保険の対象にならない診療だけを行う | 保険証での受診を求める患者さんには対応できない |
| 指定を取る | 保険診療の入口から自由診療につなげたい。一般皮膚科と美容皮膚科を両方やる | 同じ病気の治療で保険と自由診療を混ぜる「混合診療」は原則できない。会計と説明の運用を分けておく |
指定を取る場合は、開業日から逆算して地方厚生局の締切に間に合わせる必要があります。工程はクリニック開業の流れとスケジュールにまとめています。
自由診療の広告では、何に気をつけるのか
クリニックのWebサイトやSNSは、医療広告ガイドラインの対象です。自由診療の治療内容を載せる場合は、次の情報をあわせて書くことが求められます(ガイドラインでいう「限定解除」の要件)。
- 問い合わせ先(電話番号やメールアドレスなど)
- 自由診療であること、治療の内容
- 標準的な費用
- 治療の期間と回数
- 主なリスクと副作用
体験談の掲載や、治療前後の写真を説明なしで並べることなども制限されています。集客を広告会社に任せる場合も、責任はクリニックが負います。原稿を出す前に院内で確認する流れを作っておきます。
美容医療で、新しく求められていることは何か
美容医療については、ここ1年で制度の見直しが続いています。
| 時期 | 何が決まったか |
|---|---|
| 2025年12月 | 改正医療法が公布。美容医療を行う医療機関に、安全管理の体制や、合併症が起きたときに相談できる体制などを都道府県へ定期的に報告することが義務づけられた。施行の時期と報告の様式は、厚生労働省の案内で確かめる |
| 2026年3月 | 医師法施行規則が改正され、美容目的の処置や、体重を減らすための処置を行う場合、カルテに患者さんの主訴と希望する治療の内容を書くことになった(公布の日から施行) |
これから美容医療で開業するなら、カウンセリングの記録、合併症が起きたときの相談先、提携先の医療機関を、開業の準備の中で決めておくのが安全です。後から整えるより、最初の運用に組み込むほうが手間がかかりません。
自由診療のクリニックを、自分たちでも運営しています
ソクラクの運営チームは、AGAクリニックやメンズケアのクリニックを創業し、いまも自由診療のクリニックを自社で運営しています。開業の手続きだけでなく、何を・誰に・いくらで届けるか、問い合わせから来院までを誰が回すかまで一緒に設計します。
- 一般社団法人での開設なら、最短3.5ヶ月が目安です
- 保険の指定を取るか、取るならいつかを、開業日から逆算して決めます
- 広告・LINE・予約の導線を、開業前から組みます
集客の数字はお約束できません。どこに費用をかけ、何を見て判断するかを一緒に決めます。
自由診療のクリニックは、何で失敗しやすいのか
手続きで止まることは多くありません。止まりやすいのは開業したあとです。
- 値付けを競合に合わせるだけで決める。広告費と人件費を入れると、1人あたりいくら残るかが見えないまま始まってしまう
- 問い合わせに返せる人がいない。LINEや予約フォームから相談が来ても、診療の合間に返せず、来院につながらない
- 広告を止めると患者さんが来なくなる。紹介や再来院の仕組みを作らないまま、広告だけに頼る
問い合わせから来院までの対応を、誰が・どこで回すかは、開業前に決めておくことのひとつです。LINEをカルテや予約とつないで回す方法はクリニック・病院のLINE構築で書いています。
よくある質問
自由診療だけのクリニックでも、保健所への手続きは必要ですか
必要です。医師が個人で開設する場合は保健所への開設届、法人が開設する場合は開設許可の手続きがあります。保険医療機関の指定を取らない場合は、地方厚生局への指定申請が要らなくなります。
一般社団法人で、自由診療のクリニックを開設できますか
開設できます。一般社団法人は非営利の法人なので、利益を社員に分配することはできません。開設の手続きでは、保健所から非営利性について確認されます。法人の形の違いは一般社団法人と医療法人の違いにまとめています。
医師でなくても、自由診療のクリニックを開業できますか
法人を作り、その法人が開設者になる形であれば、代表者が医師でなくても開設できます。ただし、診療所の管理者は医師でなければなりません。詳しくは医師でなくてもクリニックは開業できるかで書いています。
開業規制の対象地域でも、自由診療なら関係ありませんか
関係がないとは言えません。2026年4月からの事前届出は、外来医師過多区域で診療所を開く場合に求められるものです。自由診療だけの場合の扱いも含めて、開業予定の地域の都道府県に確かめてください。制度の中身はクリニックの開業規制で整理しています。
関連ページ
- クリニック開業コンサル・支援 — 一般社団法人で、最短3.5ヶ月で開く
- クリニックの開業資金の内訳
- クリニック開業の流れとスケジュール
- クリニック開業の物件の選び方 — 個室とカウンセリングの場所
- クリニック・病院のLINE構築 — 問い合わせから来院まで
参考:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」、医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)、医師法施行規則及び歯科医師法施行規則の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第62号)。制度は改定されることがあります。開業の前に最新の内容をご確認ください。

