クリニックの業務効率化は、たいてい「何を減らすか」から始まって止まります。減らせる作業が見つからないのではなく、減らしていい作業と、減らしてはいけない作業が混ざったまま話しているからです。
ここでは、自動化(RPA)の対象になる作業の見分け方と、手を付ける順番を整理します。自院のクリニックで実際に動かしているものを前提に書いています。
効率化の話が続かない理由
「業務効率化をしよう」と言うと、たいてい大きな作業から候補に挙がります。予約の運用を変える、カルテを入れ替える、シフトの組み方を見直す。どれも効きそうに見えて、どれも誰かの判断が入っている作業です。判断が入る作業は、機械に渡せません。渡そうとすると、ルールを決める会議から始まって、そのまま止まります。
実際に効くのは、もっと地味なほうです。1回5分、誰がやっても同じ結果になる、けれど毎日発生する作業。これは大きな非効率には見えないので候補から外れがちですが、毎日で、担当者が休むと止まる種類のものです。
自動化できる作業の、3つの条件
ある作業をRPA(業務自動化)で機械に渡せるかどうかは、次の3つで判断できます。3つそろっていれば、ほぼ渡せます。
| 条件 | 中身 | これが欠けると |
|---|---|---|
| 手順が決まっている | 開く画面、押す場所、保存先まで毎回同じ | その場の判断が必要になり、機械では代われない |
| 結果が一意に決まる | 誰がやっても同じ結果になる | 人によって答えが変わる=判断業務 |
| 頻度がある | 毎日または毎週かならず発生する | 年に数回なら、作るより手でやったほうが早い |
逆に言えば、「毎日おなじ画面を開いて、おなじ手を動かしている」ものは、ほぼそのまま自動化の対象になります。医療事務のスタッフが担っている作業は、ここに固まっていることが多いです。
クリニックで対象になりやすい作業
実際に相談が多いもの、そして自院で動かしているものを並べます。
| 作業 | いま起きていること |
|---|---|
| 検査結果の取り込み | 検査会社のサイトに毎日ログインし、新しい結果を目で確認し、落として、患者ごとに振り分ける |
| 当日の予約表づくり | 朝いちばんにカルテから予約を引き、読み上げられる形に整えて印刷する |
| 月末・月初の集計 | 複数の画面から数字を拾い、表に貼り直す |
| 在庫・発注の記録 | 納品のたびに同じ台帳へ同じ形式で書き写す |
| 外部サイトの確認と転記 | 更新があるかどうかを見に行くこと自体が毎日の仕事になっている |
上2つは、AFRODE CLINIC で毎日動いています。効果として現場から返ってくるのは時間の話ではなく、「毎日そのサイトを見に行かなくてよくなった」「漏れがなくなった」という言い方でした。削れたのは作業時間だけでなく、忘れないように覚えておく負荷のほうだったようです。
手を付ける順番は、扱う情報の重さで決める
効果の大きい順ではありません。扱う情報が軽い順です。いきなり患者情報から始めると、確認事項が多すぎて動き出せません。
- カルテの外側にある作業/ダウンロード、転記、集計、印刷、フォルダの整理。患者情報に触れないものから始めます。ここだけでも毎日の手数はかなり減ります。
- 院内システム間の受け渡し/片方から出して、もう片方に入れる。それぞれの接続方法と権限を確認したうえで組みます。
- 患者情報を含む処理・カルテへの書き込み/ご利用中の製品の規約と接続方法によってできる範囲が変わります。最初にそこを確認し、認められていない場合はカルテの手前までを自動にします。
ツールを選ぶ前に決めること
「どのRPAツールがいいか」から入ると、たいてい業務のほうをツールに合わせることになります。先に決めるのは、次の3つです。
- どの作業を1本目にするか。毎日やっていることを書き出して、上の3条件に当てはまるものを1つ選びます
- 失敗したときにどうなるか。止まったことに気づける形にしておけば、業務は手作業に戻すだけで済みます
- 誰が中身を読めるか。担当者しか分からない状態は、手作業より危険です
1本目が動いてから2本目を足す、という順番にすると、動かないものを抱え込まずに済みます。クリニックのRPA・業務自動化のページに、実際に動かしている中身と進め方を載せています。
よくある質問
クリニックの業務効率化は、何から始めるのが早いですか
患者情報に触れない作業からです。検査結果のダウンロード、集計、印刷、フォルダの整理。効果の大きさではなく、確認事項の少なさで1本目を選ぶと、いちばん早く動き出せます。
医療事務の作業は自動化できますか
できるものが多くあります。医療事務まわりは、手順が決まっている作業のかたまりだからです。検査結果の取り込み、当日の予約表づくり、月末の集計、外部サイトの確認と転記。どこから手を付けるかは、実際の1日の流れを書き出して決めます。
いま使っている電子カルテのままで自動化できますか
カルテの外側の作業は、多くの場合そのままできます。カルテへの書き込みは、ご利用中の製品の規約と接続方法によって変わるため、最初にそこを確認します。認められていない場合は、カルテの手前までを自動にします。
RPAとAIは、どちらを先に入れるべきですか
手順が決まっている作業が残っているなら、RPAが先です。決まった手順はRPAのほうが速く、確実で、結果が予測できます。判断が要る部分だけをAIに寄せると、両方が噛み合います。AIについてはクリニックのAI導入のページをご覧ください。
担当者しか分からない状態になりませんか
そうならない形で作るかどうかの問題です。何を、どの順で、どこに書いているか。処理の中身と手順書が読める形で残っていれば、担当が変わっても引き継げます。ここは最初の設計で決まります。
最後に
クリニックの業務効率化でいちばん効くのは、大きな作業を変えることではなく、毎日かならず発生する小さな作業を、人の手から外すことでした。判断は人が持ったまま、手順だけを機械に渡す。それだけで、患者さんにどう向き合うかを考える時間が戻ります。
いま毎日やっている作業をひとつ挙げていただければ、それが自動化の対象になるかどうかをその場でお答えできます。
関連ページ
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- 病院でRPAは何に使えるか — 医事課の集計・部門システム間の転記
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