クリニック開業支援コンサルの正しい使い方|任せる仕事・自分で持つ仕事の切り分け方

クリニック開業支援コンサルの正しい使い方——任せる仕事と自分で持つ仕事の切り分け方

クリニックを開業するとき、開業支援会社やコンサルタントにどこまでお願いするべきか。物件選定、内装、採用、行政手続き、マーケティング、Web制作まで、開業には非常に多くの仕事があります。
そのため「全部まとめてお願いしたい」と考える方も少なくありません。ただ、私自身は、何でもコンサルタントに任せればよいとは思っていません。

むしろ重要なのは、何を外部に任せ、何を自分たちの中に残すのかを最初に決めることです。開業支援コンサルタントの使い方を間違えると、開業自体はできても、その後に自分たちでクリニックを経営できない状態になってしまいます。

今回は、クリニックの開業支援を年間15院以上行う立場から、開業コンサルタントをどう使うべきなのかを整理します。

目次

最初に決めるべきなのは「支援スコープ」

クリニック開業支援をお願いするとき、最初に明確にしておきたいのが支援スコープです。たとえば、開業には次のような仕事があります。

  • 事業計画の作成
  • 診療コンセプトの設計
  • 物件選定
  • 資金調達
  • 内装・設計
  • 医療機器の選定
  • 採用
  • チーム組成
  • 行政・保健所対応
  • 保険診療に関する各種申請
  • Webサイト制作
  • 集客・マーケティング
  • 開院後の運営設計

もちろん、これらをすべて支援会社に依頼することもできます。ただ、ここで一度考えてほしいことがあります。全部を外部に任せた場合、そのクリニックの中に何が残るのか。

開業時だけ必要になる仕事と、開業後も継続して必要になる仕事は、分けて考える必要があります。

スポットでしか発生しない仕事は、外部に任せてよい

外部に任せやすいのは、開業時にしか発生しない仕事です。たとえば次のような業務です。

  • 保健所への開設手続き
  • 保険診療に関する申請
  • 法人設立に伴う手続き
  • 内装工事の進行管理
  • 医療機器導入時の専門的な調整

これらは非常に重要ですが、一度開院してしまえば、日常的に繰り返す仕事ではありません。もちろん将来2院目、3院目と展開する場合には再び必要になりますが、少なくとも毎月発生する業務ではありません。

そのため、専門家や開業支援会社のノウハウを借りて、スポットで進める合理性があります。院内に経験のある事務長がいて対応できるのであれば理想ですが、無理に自社でノウハウを抱える必要はありません。

コアメンバーの採用は、自分たちで関わったほうがよい

逆に、完全に外部へ任せるべきではないと思っているのが、コアメンバーの採用です。院長、事務長、看護師長、立ち上げメンバーなど、クリニックの文化や運営を作る人たちは、開業後もずっと一緒に仕事をしていくことになります。

ここを「条件だけ伝えて採用会社に任せる」「コンサルタントが連れてきた人から選ぶ」という形だけで決めてしまうのは、少し危険です。

採用活動そのものを外部に手伝ってもらうことは問題ありません。候補者集めや媒体運用、面接調整などを任せるのもよいと思います。ただし、最終的に誰と一緒にクリニックを作るのかという判断まで外部に渡さないこと。これは開業者自身が持っていたほうがよい仕事です。

マーケティングは「作業」を任せても「判断」は持つ

マーケティングも同じです。Webサイトの制作や広告運用、SEO、SNS運用など、実際に手を動かす業務まで院長自身が担当する必要はありません。むしろ専門会社に任せたほうが効率的なケースは多いでしょう。

ただし、自分たちのクリニックが何を売りにするのかという判断まで外注してはいけません。自由診療であれば、次のことを考える必要があります。

  • 何を主力商品にするのか
  • どの価格帯で戦うのか
  • 誰を顧客にするのか
  • 競合との違いをどこに作るのか

保険診療であっても、どの患者層を中心にするのか、どの診療領域を強みにするのか、地域の中でどのようなポジションを取るのかを考えなければなりません。

これらは、開業時だけの問題ではありません。5年、10年とクリニックを運営する中で、何度も見直していくものです。そのため、広告運用は外注しても、マーケティングの意思決定は自分たちで持つ。この切り分けが重要だと思っています。

中長期の経営判断までコンサル任せにするのは危ない

クリニック経営で本当に重要なのは、開業することではありません。開業後に利益を出しながら、継続的に運営していくことです。たとえば、こうした判断はずっと発生します。

  • どの診療を伸ばすのか
  • 固定費をどこまで持つのか
  • 何人のスタッフで運営するのか
  • どの施策に広告費を使うのか
  • いつ設備投資をするのか
  • 2院目を出すのか
  • どのタイミングで方向転換するのか

もし、これらを毎回コンサルタントに聞かないと決められないのであれば、その状態はあまり健全ではありません。もちろん第三者の意見を聞くこと自体は非常に有益です。しかし理想的なのは、コンサルタントに答えを出してもらうのではなく、判断できるための考え方やノウハウをもらうことです。

良いコンサルタントは「自走できる状態」を作る

私が開業支援コンサルタントを選ぶのであれば、重視するのはこの点です。その人と付き合うことで、自分たちの中にノウハウが残るか。

良い開業支援とは、ずっとコンサルタントが必要な状態を作ることではありません。最初に必要な知識を渡し、「こういうときは、この観点で判断してください」「この数字を見れば、この施策を続けるべきか判断できます」「業者を選ぶときは、このポイントを比較してください」といった判断軸を渡してくれる。そして徐々に、クライアント自身で判断できるようにしていく。

私はこういう支援のほうが、長期的には価値が高いと思っています。逆に、開業後も何となく長期契約を続けること自体が前提になっている支援には、注意したほうがよいでしょう。

「紹介してもらった会社=一番良い会社」とは限らない

開業支援では、多くの業者を紹介してもらうことになります。内装会社、医療機器会社、Web制作会社、広告代理店、採用会社、税理士、社労士、行政書士などです。

もちろん、信頼できる会社を紹介してもらえることは大きなメリットです。一方で、紹介だからといって、そのまま決める必要はありません。

クリニック開業は紹介ビジネスになりやすい領域です。支援会社と業者との間に長い取引関係があったり、紹介手数料が発生したりするケースもあります。それ自体が悪いという話ではありません。重要なのは、紹介された会社と契約する理由を、自分でも説明できる状態にしておくことです。

可能であれば相見積もりを取り、金額、実績、提案内容、開業後のサポート、担当者との相性などを比較したほうがよいでしょう。

コンサルタントには「業者」ではなく「判断軸」を出してもらう

その意味で、コンサルタントにお願いするとよいのは、「この会社にしてください」と決めてもらうことではありません。むしろ、「この領域では何を比較すればよいですか」「この見積書のどこを見るべきですか」「この会社とこの会社なら、どういう違いがありますか」といった判断材料を出してもらうことです。

さらに良いのは、候補となるパートナー探しそのものを一緒にやってもらうことです。つまり、コンサルタントを単なる業者紹介役ではなく、開業プロジェクトの戦略参謀として使う。この使い方が最も合理的だと考えています。

「コンサルタント」と一括りにしない

もうひとつ注意したいのは、クリニック開業コンサルタントといっても、得意領域はかなり違うということです。

そのため、「クリニック開業コンサルだから全部できるだろう」と考えるのではなく、自分が何に困っているのかを先に明確にすることが重要です。

開業支援のおすすめの切り分け方

私であれば、大きく3つに分けて考えます。

領域基本的な考え方
開業時にしか発生しない専門業務外部に任せる
開業後も繰り返し必要になる業務自社にノウハウを残す
経営の意思決定最終的には自分たちで持つ

行政手続きや開設申請などは、専門家に任せればよい。一方で、人材、マーケティング、診療コンセプト、収益構造といった長期的に経営へ影響する部分は、自分たちでも理解しておく。この切り分けができていれば、開業支援会社を非常にうまく使えると思います。

最後に|私たちが開業支援で大事にしていること

開業支援コンサルタントは、非常に便利な存在です。経験がなければ数週間かかることを、経験のある人に任せることで数日で進められることもありますし、過去の失敗事例を知っているからこそ、余計な遠回りを避けられることもあります。

ただ、重要なのは、コンサルタントにクリニックを作ってもらうことではないと思っています。自分たちでクリニックを経営していける状態を作るために、必要なところで専門家の力を借りる。そのために、最初の戦略や判断軸を一緒に作ってもらう。私は、この距離感が開業支援コンサルタントの一番良い使い方だと考えています。

私たち自身もクリニックの開業支援をしていますが、どちらかというと得意としているのは、単純な「開業作業の代行」ではありません。

どのような法人・事業スキームで始めるのか。誰が経営を担い、誰が医療を担うのか。固定費をどこまで持つのか。どのような体制であれば、開院したあとも無理なく運営を続けられるのか。

こうした、クリニックを始める前の「基盤設計」の部分を特に大切にしています。法人のかたちひとつ取っても、選び方によって最初にしんどい設計が集中することがあります。そのあたりは一般社団法人でクリニックを開くデメリットにも書きました。

もちろん、私自身もクリニックを経営していますので、自由診療のマーケティングや商品設計、集客、オペレーションについても実務として取り組んでいます。そこについても、一般的な開業コンサルティングとは違った経験を提供できると思っています。

ただ、私が一番支援したいと思っているのは、単に広告をうまく回したい人ではありません。これから自由診療という領域で新しいクリニックをつくり、新しい事業に挑戦しようとしている人です。

クリニックを始めること自体は、手続きをひとつずつ進めていけばできます。難しいのは、そのあとです。開院してから、

  • この固定費では続かなかった
  • 医師との役割分担を決めていなかった
  • 集客はできたけれど利益が残らなかった
  • 経営判断をできる人が社内にいなかった

という状態になってしまうと、そこから立て直すほうがはるかに大変です。私自身、実際にクリニックを運営しているからこそ、開業前の基盤設計が、その後の経営にかなり大きく影響すると感じています。だからこそ、私たちはそこを支援したいと思っています。

物件を紹介することや、内装会社を紹介することだけが開業支援ではありません。そのクリニックが、何を強みにして、どのような体制で、どうやって長く経営していくのか。そこを一緒に考え、必要な専門家やパートナーを組み合わせながら、最終的には経営者自身が判断できる状態をつくっていく。これが、私たちが考えているクリニック開業支援のあり方です。

これから自由診療クリニックを立ち上げたい、医療事業に新しく挑戦したいという方であれば、まだ具体的な物件や診療内容が決まっていない段階でも構いません。むしろ、その前の段階で一度整理しておくことに、意味があると思っています。開業のご相談はこちらから、どうぞお気軽にお声がけください。

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