整形外科クリニックの開業は、リハビリをどこまでやるかで、広さも、人も、費用も、ほぼ決まります。リハビリを持つなら理学療法士などの採用と、届出に合う広さの部屋が要り、給与費が大きくなります。持たないなら身軽ですが、通い続けてもらう理由が少なくなります。
この記事では、厚生労働省の医療経済実態調査から整形外科クリニックの収支を読み、リハビリの有無で変わること、開業費用と物件の考え方を整理します。
整形外科クリニックの収支は、どれくらいなのか
入院のない整形外科クリニック1施設あたりの、1年間の数字です(令和6年度にあたる期間。千円単位の数値を万円に四捨五入しています)。
| 項目 | 個人の開設 | 医療法人の開設 |
|---|---|---|
| 医業収益 | 1億1,049万円 | 1億6,433万円 |
| 給与費 | 3,623万円 | 9,093万円 |
| 医薬品費 | 1,147万円 | 2,230万円 |
| 減価償却費 | 507万円 | 603万円 |
| 損益差額 | 3,065万円 | 527万円 |
| 損益率 | 27.4%(前年度 26.8%) | 3.2%(前年度 4.1%) |
| 集計した施設数 | 39 | 143 |
個人の給与費3,623万円は、内科(2,483万円)や眼科(2,645万円)より大きく、人の多さが整形外科の特徴として数字に出ています。医療法人の損益率は3.2%と薄めです。個人の給与費には院長自身の報酬が入っていないので、個人の損益差額は「院長の取り分・税金・借入の返済」の原資で、法人の数字とはそのまま比べられません。
リハビリを持つかどうかで、何が変わるのか
| 項目 | リハビリを持つ | 診察・処置が中心 |
|---|---|---|
| 広さ | リハビリの部屋(機能訓練室)が要る。届出の基準に合う面積かを物件の段階で確かめる | 診察室・処置室・エックス線室が中心 |
| 人 | 理学療法士などの採用。人数で届け出られる区分が変わる | 医師・看護師・放射線技師などが中心 |
| 患者さんの通い方 | 定期的に通う方が多くなる | 診察と処置で、通う回数は少なめ |
| 費用で重くなるところ | 人件費と広さ(家賃) | エックス線などの機器 |
リハビリの施設基準(部屋の面積や、配置する職種と人数)は、届け出る区分ごとに決まっています。物件を契約してから面積が足りないと分かるのが、いちばんの失敗です。どの区分で届け出るかを先に決め、地方厚生局の基準と照らしてから物件を決めます。
整形外科の開業費用は、何で変わるのか
| 決めること | 費用に効くところ |
|---|---|
| エックス線と画像診断 | エックス線装置と遮へい工事・届出。骨密度の測定や MRI まで置くか |
| リハビリの規模 | 部屋の広さ(家賃と内装)、物理療法などの機器、療法士の人数 |
| 車いすでの出入り | 入口の段差、広い通路、エレベーター、駐車場 |
| 運転資金 | 人件費が大きいぶん、入金が始まるまでの月々の固定費も大きい |
資金の全体像と運転資金の見積もり方はクリニックの開業資金、物件の確かめ方はクリニック開業の物件の選び方にまとめています。
一般社団法人での整形外科の開設を、設計から保健所まで一緒に進めます
整形外科は、リハビリの区分・広さ・療法士の人数が、物件と資金の条件をまとめて決めます。物件を探し始める前に、その条件を一緒に固めます。
- 無料相談のなかで、大枠の試算をお出ししています
- 一般社団法人で開設する場合の、法人まわりの費用も含めて見ます
- 物件・内装・機器・人材紹介は、それぞれ得意なパートナー会社をご紹介します
開業すると決めていない段階でも構いません。
整形外科の数は、増えているのか
令和5年の調査では、整形外科を掲げる一般診療所は12,298施設で、令和2年から141施設減っています。リハビリテーション科は10,958施設で、500施設減っています(どちらも重複あり)。高齢の方が増える地域では需要が見込める一方、リハビリを担う人の採用が開業の成否を分けます。医師が特に多い地域での事前届出はクリニックの開業規制に書きました。
整形外科を一般社団法人で開設すると、何が変わるのか
整形外科でも、一般社団法人を開設者にできます。違いが出るのは診療の中身ではなく、開設の手続きと、その後の動かしやすさです。
| 項目 | 一般社団法人で開設すると |
|---|---|
| 開設の手続き | 開設の前に保健所の許可を受ける(個人で開くなら開設後10日以内の届出)。保健所は法人の非営利性も確かめる |
| 代表者と管理者 | 代表者に医療の資格は要らない。管理者は医師(歯科は歯科医師) |
| 拠点と承継 | 院長が替わっても開設者は法人のまま。分院や承継を前提に設計しやすい |
整形外科は、療法士など人の多い診療科です。人を法人で雇い、院長が替わっても体制を引き継げる形にしやすくなります。医療法人との違いは一般社団法人と医療法人の違い、弱いところは一般社団法人でクリニックを開くデメリットにまとめています。
よくある質問
整形外科の開業資金は、いくらくらいですか
公的な統計で、整形外科の開業資金の相場を示したものはありません。リハビリの部屋の広さ、MRI などの画像機器を置くか、居抜きかスケルトンかで大きく変わります。人件費が大きい診療科なので、運転資金も多めに見ておきます。
リハビリなしで整形外科を開業できますか
できます。診察・処置・エックス線が中心の形なら、広さと人を抑えられます。ただし、あとからリハビリを足すには広さが要るので、将来持つかもしれないなら、最初の物件選びで余地を残しておきます。
整形外科の開業で、物件選びで気をつけることは何ですか
リハビリの部屋の面積が届出の基準に合うか、車いすで出入りできるか、エックス線室の遮へい工事ができるかの3つです。どれも契約の後では直しにくいので、契約前に確かめます。
関連ページ
参考:中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年実施)一般診療所・主たる診療科別の損益状況(入院診療収益なし、集計2)、厚生労働省「令和5年医療施設(静態・動態)調査」表6、医療法施行規則 第24条の2(2026年10月30日確認)。

