医師(臨床研修を修了した医師・歯科医師)でない者が診療所を開設するときは、開設の前に都道府県知事の許可を受けます。保健所を設置する市や特別区では、市長・区長の許可です(医療法 第7条第1項)。一般社団法人や医療法人がクリニックを開くときは、この許可が必ず要ります。
この記事では、開設許可の申請書に書く事項、許可が下りる基準、許可を受けて開設したあとの届出、開設後に許可を取り直す変更を、医療法と施行規則にもとづいて整理します。
診療所の開設許可は、誰が受けるのか
| 開設者 | 開設の前に | 根拠 |
|---|---|---|
| 臨床研修を修了した医師・歯科医師(個人) | 許可は要らない。開設後10日以内に届け出る | 医療法 第8条 |
| それ以外(一般社団法人・医療法人など) | 開設の許可を受ける | 医療法 第7条第1項 |
許可を出すのは開設地の都道府県知事で、開設地が保健所を設置する市や特別区の区域にあれば、その市長・区長です。実際の窓口は、開設地を受け持つ保健所になります。医師でない人がどの法人の形で開設できるかは医師でなくてもクリニックは開業できるかに書きました。
開設許可の申請書には、何を書くのか
記載事項は医療法施行規則 第1条の14第1項に決まっています。入院のベッドが無い診療所を、医師でない法人が開設する場合に関わるのは、次の事項です。
| 事項 | 中身 |
|---|---|
| 開設者 | 法人の名称と主たる事務所の所在地 |
| 名称・場所 | 診療所の名称と、開設の場所 |
| 診療科目 | 診療を行おうとする科目 |
| 開設の目的と維持の方法 | 医師でない者が開設するときに書く。なぜ開設するのか、どうやって運営を続けるのか |
| 従業者の定員 | 医師・歯科医師・薬剤師・看護師その他の従業者の定員 |
| 敷地と建物 | 敷地の面積と平面図、敷地周囲の見取図、建物の構造概要と平面図(各室の用途を示す) |
| 歯科技工室 | 歯科で歯科技工室を設けるなら、その構造設備の概要 |
| 定款 | 開設者が法人なら、定款 |
| 開設の予定年月 | いつ開設する予定か |
| 外来医師過多区域 | その区域で開設するなら、事前の届出などに関わる事項 |
申請書の様式や、添えて出す書類の細かい指定は、自治体ごとに決まっています。開設地の保健所の案内で確かめてください。外来医師過多区域での事前の届出はクリニックの開業規制とはにまとめています。
一般社団法人で申請するとき、どこを丁寧に書くのか
「開設の目的及び維持の方法」と「定款」です。医療法は、営利を目的として診療所を開設しようとする者には許可を与えないことができる、としています(医療法 第7条第7項)。保健所は申請書と定款、役員の構成、資金の流れから、営利を目的としていないかを確かめます。
| 書類 | 説明できるようにしておくこと |
|---|---|
| 開設の目的 | 法人がなぜこの地域で診療所を開くのか。定款の目的と食い違っていないか |
| 維持の方法 | 開設の資金をどこから出すのか、開設後の運営費をどう賄うのか |
| 定款 | 目的に診療所の運営が入っているか。剰余金を社員に分配する定めは置けない(一般社団法人法 第11条第2項) |
| 取引の相手 | 物件・機器・業務委託の相手が役員の関係先なら、価格の根拠と契約書 |
非営利性の確かめられ方は一般社団法人でクリニックを開くデメリット、法人そのものの作り方は一般社団法人の設立手続きに書きました。物件や業務を別会社に持たせるなら、MS法人とはも参考にしてください。
開設の許可は、どんなときに下りるのか
申請された施設の構造設備と人員が、医療法にもとづく厚生労働省令と都道府県の条例の要件に合っていれば、許可を与えなければならない、と決められています(医療法 第7条第4項)。そのうえで、営利を目的とする者には許可を与えないことができます(同条第7項)。
つまり、見られるのは「建物と人がそろっているか」と「営利を目的としていないか」の2つです。建物は内装が終わってからでは直しにくいので、図面の段階で保健所に相談しておくと手戻りを減らせます。逆算のしかたはクリニック開業の流れとスケジュールにまとめています。
開設許可の申請まで、一緒に進めます
申請書の「開設の目的及び維持の方法」と定款は、法人を作る前の設計で決まります。法人の設計から保健所とのやり取りまで、通して見られる形にしておくと手戻りが減ります。
- 定款・社員と理事の構成を、開設許可の申請まで見据えて一緒に決めます
- 保健所への申請の書類を整理し、折衝にも同席します
- 許可申請の書類作成は行政書士、登記は司法書士と連携し、当社が全体の進行を持ちます
物件が決まる前の段階でも構いません。
許可を受けて開設したら、何を届け出るのか
| 届出・申請 | いつまでに・中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 開設の届出 | 開設してから10日以内。開設年月日、管理者の住所と氏名など | 医療法施行令 第4条の2 |
| エックス線装置の届出 | 装置を備えてから10日以内。製作者名・型式・台数、防護の構造設備、従事する人 | 医療法 第15条第3項、同法施行規則 第24条の2 |
| 保険医療機関の指定 | 保険診療をするなら、地方厚生局に申請する | 健康保険法 第63条第3項第1号・第65条 |
保険医療機関の指定は、地方厚生局が申請の締め切りと指定日の予定を示しています。保険診療を開設日から始めたいなら、その予定から逆算して開設日を決めます。
開設したあとに、許可を取り直すのはどんなときか
医師でない者が開設した診療所は、決められた事項を変えるときにも、変更の許可を受けます(医療法 第7条第2項)。届出で足りる事項と分かれているので、改装や増員の前に確かめておきます。
| 手続き | 対象になる事項 | 根拠 |
|---|---|---|
| 変更の許可 | 開設の目的と維持の方法、従業者の定員、敷地の面積と平面図、建物の構造概要と平面図、歯科技工室の構造設備など | 医療法施行規則 第1条の14第3項 |
| 変更から10日以内の届出 | 開設者の住所・名称、診療所の名称、診療科目、定款など | 医療法施行令 第4条第1項、同法施行規則 第1条の14第4項 |
たとえば診察室を増やす改装は建物の平面図の変更に、スタッフの増員は従業者の定員の変更に当たります。どちらも、変える前に許可を受ける事項です。
よくある質問
診療所の開設許可は、どこに申請しますか
開設地の都道府県知事に申請します。開設地が保健所を設置する市や特別区の区域にあれば、その市長・区長です。実際の窓口は、開設地を受け持つ保健所です。
医師が個人で開業するときも、開設の許可は要りますか
臨床研修を修了した医師・歯科医師が個人で診療所を開設するときは、許可は要りません。開設してから10日以内に届け出ます(医療法 第8条)。許可が要るのは、法人など医師でない者が開設するときです。
開設許可の申請書に、定款は必要ですか
開設者が法人のときは、定款が記載事項に入っています(医療法施行規則 第1条の14第1項第15号)。定款の目的に診療所の運営が入っているか、剰余金を分配する定めが無いかは、保健所が非営利性を確かめるときに見るところです。
開設したあとで診察室を増やすときは、届け出るだけでよいですか
医師でない者が開設した診療所では、建物の構造概要と平面図の変更は、変える前に許可を受ける事項です(医療法 第7条第2項、同法施行規則 第1条の14第3項)。改装の計画ができた段階で保健所に相談してください。
関連ページ
参考:医療法 第7条・第8条・第15条第3項、医療法施行令 第4条・第4条の2、医療法施行規則 第1条の14・第24条の2、健康保険法 第63条・第65条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第11条第2項(e-Gov法令検索、2026年11月2日確認)。申請書の様式と添付書類は、開設地の自治体の案内をご確認ください。

