MS法人(メディカルサービス法人)は、クリニックの医療以外の業務を引き受ける会社です。多くは株式会社で、法律に「MS法人」という定めがあるわけではありません。物件の賃貸、機器のリース、受付や事務の受託、物販などを受け持ち、クリニックとは別の会社として動かします。
この記事では、MS法人が何をする会社か、なぜ作るのか、一般社団法人や医療法人のクリニックと組むときに気をつけること、作らないほうがよい場合を整理します。税務の判断は税理士に確かめてください。
MS法人とは、何をする会社か
MS法人は、クリニックの運営に要る業務のうち、医療行為ではないものを受け持ちます。医業は医師でなければできないので、MS法人が診療をすることはありません。
| 受け持つ業務の例 | 中身 |
|---|---|
| 不動産の賃貸 | MS法人が物件を持つ、または借りて、クリニックに貸す |
| 機器・備品のリース | 医療機器や什器をMS法人が持ち、クリニックに貸す |
| 事務の受託 | 受付・会計・清掃・経理などの業務を請け負う |
| 物販 | 化粧品・サプリメントなど、診療とは別の商品を売る |
| 広告・Web | ホームページや広告の運用を受け持つ |
なぜ、MS法人を作るのか
クリニックを開設する法人のほうに、利益を分配できないという決まりがあるからです。医療以外の事業や、出資した人への見返りを考えるなら、それに向いた会社を別に持つ、という役割分担になります。
| 開設する法人 | 利益の分配について | 根拠 |
|---|---|---|
| 医療法人 | 剰余金の配当をしてはならない | 医療法 第54条 |
| 一般社団法人 | 社員に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めは効力を持たない。社員総会も剰余金を分配する決議ができない | 一般社団法人法 第11条第2項・第35条第3項 |
| MS法人(株式会社) | 株主への配当ができる | 会社法 |
そのほか、物販や他の事業をクリニックと切り分けて管理できる、という理由で作ることもあります。税金を減らすことを主な目的にするのは勧めません。取引の中身に実態が伴わないと、税務の上でも、次に書く非営利性の上でも問題になります。
一般社団法人のクリニックとMS法人を組むとき、何に気をつけるのか
一般社団法人がクリニックを開設するとき、保健所は構造設備に加えて、法人の非営利性(定款、役員の構成、資金の流れ)を確かめます。MS法人との取引は、まさにこの「資金の流れ」に当たります。
| 気をつけること | 中身 |
|---|---|
| 取引の価格 | 家賃・リース料・委託料が相場とかけ離れていないか。相場の根拠を残しておく |
| 契約書 | 何を、いくらで、いつまで提供するのかを書面にする |
| 役員の重なり | クリニック側とMS法人側の役員が同じ人の場合、誰がどう取引条件を決めたかを説明できるようにする |
| 業務の実態 | 受託した業務を、MS法人が実際に行っているか |
医療法人の場合は、理事長の配偶者が代表を務める会社などの「関係事業者」との取引を、毎年の事業報告で報告することになっています(医療法 第51条)。一般社団法人でも、同じ目で見られると考えて整えておくのが安全です。一般社団法人での開設そのものの弱いところは一般社団法人でクリニックを開くデメリットに書きました。
クリニックとMS法人の役割分担を、最初に設計します
一般社団法人でクリニックを開設するとき、MS法人をどう組み合わせるかで、その後の動かしやすさが変わります。保健所に説明できる形で、最初に整えておきます。
- 定款の文言、非営利性の担保、社員と理事の構成を一緒に決めます
- MS法人との収益構造について、考え方をご相談いただけます
- 税務の判断と申告は、提携する税理士が担当します
MS法人を作るかどうかを決める前の段階でも構いません。
MS法人を作らないほうがよいのは、どんな場合か
| 場合 | 理由 |
|---|---|
| 規模が小さい | 会社が2つになると、決算・税務申告・契約の管理が2つになる。手間と費用のほうが大きくなりやすい |
| 任せる業務が無い | 実際にMS法人が受け持つ業務が無いなら、作る理由が無い |
| 取引を説明できない | 価格の根拠や業務の実態を説明できない取引は、非営利性と税務の両方で問題になる |
開設する法人のかたちそのものの選び方は一般社団法人と医療法人の違い、医師でない人が開業するときの進め方は医師でなくてもクリニックは開業できるかにまとめています。
よくある質問
MS法人は、医療行為をできますか
できません。医業は医師でなければできないため、診療はクリニックが行います。MS法人が受け持つのは、物件・機器の貸し出し、事務の受託、物販など、医療行為ではない業務です。
一般社団法人のクリニックでも、MS法人を作れますか
作れます。ただし、保健所は法人の非営利性を資金の流れまで含めて確かめるため、MS法人との取引は、価格の根拠と契約書、業務の実態を説明できる形にしておきます。
MS法人を作ると、税金は安くなりますか
一概には言えません。法人が2つになることで費用も増え、取引に実態が無ければ税務の上で認められないこともあります。税金だけを目的に作ることは勧めません。具体的な判断は税理士に確かめてください。
MS法人は、いつ作るのがよいですか
クリニックの開設と同時に作る必要はありません。物販を始める、物件や機器を持つ、分院を出すなど、MS法人に任せる業務がはっきりした時点で考えれば足ります。開設時に決めておくのは、クリニック側の法人の設計です。
関連ページ
参考:医療法 第51条・第54条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第11条・第35条(e-Gov法令検索、2026年10月31日確認)。税務の取り扱いは個別の事情で変わります。具体的な判断は税理士にご確認ください。

