皮膚科を掲げる診療所は、令和2年の12,410施設から令和5年の13,185施設へ、3年で775施設増えています。保険診療の皮膚科に美容の自費診療をどこまで組み合わせるかで、設備も、入金の流れも、守るルールも変わるのが皮膚科の開業です。
この記事では、厚生労働省の医療経済実態調査から皮膚科クリニックの収支を読み、保険と自費の組み合わせ方、開業費用が何で変わるかを整理します。
皮膚科クリニックの収支は、どれくらいなのか
入院のない皮膚科クリニック1施設あたりの、1年間の数字です(令和6年度にあたる期間。千円単位の数値を万円に四捨五入しています)。
| 項目 | 個人の開設 | 医療法人の開設 |
|---|---|---|
| 医業収益 | 6,406万円 | 1億7,431万円 |
| 給与費 | 1,953万円 | 9,126万円 |
| 医薬品費 | 630万円 | 1,396万円 |
| 減価償却費 | 380万円 | 584万円 |
| 損益差額 | 1,672万円 | 1,424万円 |
| 損益率 | 26.1%(前年度 26.0%) | 8.2%(前年度 10.7%) |
| 集計した施設数 | 33 | 71 |
医療法人の皮膚科では、医業収益のうち外来の保険診療が占めるのは62.5%です。残りの多くは自費などで、保険中心の内科(個人で85.8%)とは収益の作りが違います。なお個人の給与費には院長自身の報酬が入っていないので、個人の損益差額は「院長の取り分・税金・借入の返済」の原資で、法人の数字とはそのまま比べられません。
保険と自費は、どう組み合わせるのか
皮膚科の開業でいちばん大きな分かれ目は、自費の美容診療をどこまで持つかです。3つの形で、費用もお金の入り方も変わります。
| 形 | 設備と部屋 | お金の入り方と、気をつけること |
|---|---|---|
| 保険中心の一般皮膚科 | 診察室と処置室。大きな機器は少ない | 大半が2か月後の入金。患者数で回すので、受付と待ち時間の設計が要 |
| 保険+美容を併設 | レーザーなどの機器と、施術・カウンセリングの個室 | 保険分は2か月後、自費分は窓口で。保険と自費の会計・カルテを分け、広告のルールを守る |
| 美容中心 | 機器と個室が中心 | ほぼ窓口で入金。集患の費用と、価格・広告の表示ルールが重い |
同じ病気の治療で保険診療と自費を組み合わせると、原則として全体が自費になります(いわゆる混合診療の禁止)。併設するなら、メニューと会計の分け方を最初に決めておきます。自費が中心になる場合の考え方は自由診療クリニックの開業にまとめています。
皮膚科の開業費用は、何で変わるのか
| 決めること | 費用に効くところ |
|---|---|
| 美容機器をどこまで置くか | レーザー・光治療器などは1台ごとの金額が大きい。購入かリースか |
| 個室の数 | 施術とカウンセリングの個室。広さと内装 |
| 処置室と小手術 | 処置の範囲と、滅菌の設備 |
| 院内処方か院外処方か | 外用薬などの在庫と調剤の場所・人 |
美容機器は、開業時に全部そろえず、患者さんの反応を見て足していく選び方もあります。資金の全体像と運転資金はクリニックの開業資金にまとめています。
一般社団法人での皮膚科の開設を、設計から保健所まで一緒に進めます
皮膚科は、美容をどこまで持つかで機器・個室・運転資金がまとめて変わります。比率とエリアが決まれば、大枠は出せます。
- 無料相談のなかで、大枠の試算をお出ししています
- 一般社団法人で開設する場合の、法人まわりの費用も含めて見ます
- 物件・内装・機器は、それぞれ得意なパートナー会社をご紹介します
開業すると決めていない段階でも構いません。
物件と立地では、何を見るのか
保険中心なら、子どもから高齢の方まで通う生活圏の立地が向きます。美容を持つなら、個室を取れる広さと、通りからの見え方も効いてきます。物件の確かめ方はクリニック開業の物件の選び方、医師が特に多い地域での事前届出はクリニックの開業規制に書きました。
皮膚科を一般社団法人で開設すると、何が変わるのか
皮膚科でも、一般社団法人を開設者にできます。違いが出るのは診療の中身ではなく、開設の手続きと、その後の動かしやすさです。
| 項目 | 一般社団法人で開設すると |
|---|---|
| 開設の手続き | 開設の前に保健所の許可を受ける(個人で開くなら開設後10日以内の届出)。保健所は法人の非営利性も確かめる |
| 代表者と管理者 | 代表者に医療の資格は要らない。管理者は医師(歯科は歯科医師) |
| 拠点と承継 | 院長が替わっても開設者は法人のまま。分院や承継を前提に設計しやすい |
保険と美容を併設するなら、定款の目的に何を書いておくかも、法人の設計の段階で決めておきます。医療法人との違いは一般社団法人と医療法人の違い、弱いところは一般社団法人でクリニックを開くデメリットにまとめています。
よくある質問
皮膚科の開業資金は、いくらくらいですか
公的な統計で、皮膚科の開業資金の相場を示したものはありません。保険中心なら大きな機器は少ない一方、美容を併設するとレーザーなどの機器と個室の分が大きく加わります。どこまで自費を持つかを決めてから見積もるのが確実です。
美容皮膚科を併設するときに、気をつけることは何ですか
保険診療と自費のメニュー・会計・カルテを分けることと、広告のルールです。同じ病気の治療で保険と自費を組み合わせると、原則として全体が自費になります。ホームページの書き方にも医療広告のルールがかかります。
皮膚科は増えていますが、競合は多くないですか
皮膚科を掲げる診療所は3年で775施設増えています。保険の一般皮膚科か、美容まで持つかで競う相手が変わるので、まずどの形で開くかを決め、そのうえで地域の医院を見ます。
関連ページ
参考:中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年実施)一般診療所・主たる診療科別の損益状況(入院診療収益なし、集計2)、厚生労働省「令和5年医療施設(静態・動態)調査」表6(2026年10月30日確認)。

