クリニックの承継開業は、患者さん・スタッフ・設備がそろった状態から始められる一方で、開設者が替わると、元のクリニックは「廃止」、新しい開設者が「新たに開設」する扱いになります。保険医療機関の指定も取り直しになるため、手続きの順番を誤ると、保険診療ができない空白の期間が生まれます。
この記事では、承継開業で必要な手続き、保険医療機関の指定日をさかのぼってもらう「遡及指定」の考え方、引き継ぐ前に確かめることを整理します。
承継開業では、どんな手続きが要るのか
| 手続き | 中身 |
|---|---|
| 元の開設者の廃止届 | 診療所を廃止してから10日以内に、都道府県知事(保健所設置市は市長)へ届け出る |
| 新しい開設者の開設 | 医師が個人で開設するなら、開設後10日以内に開設届。法人が開設するなら、開設の前に開設許可を受ける |
| 保険医療機関の指定 | 新しい医療機関として、地方厚生局に指定を申請する。指定日は原則として毎月1日 |
| 施設基準など | 算定していた施設基準や各種の届出も、新しい医療機関として出し直す |
| 法人で引き継ぐ場合 | 社会保険への加入など、法人としての手続きも要る |
同じ場所・同じ患者さんで続けていても、手続きのうえでは別のクリニックになります。工程の全体はクリニック開業の流れとスケジュールにまとめています。
保険診療を途切れさせないには、どうするのか
新しく指定を受けると、指定日は原則として申請の翌月1日になります。そのままでは、元のクリニックの廃止日から新しい指定日まで、保険診療ができない期間が空いてしまいます。そこで、一定の条件を満たせば、指定日を元のクリニックの廃止日にさかのぼってもらえる「遡及指定」があります。
| 区分 | 当てはまる例 |
|---|---|
| 開設者の死亡など | 個人の開設者が亡くなり、家族や勤務医が引き継ぐ場合 |
| 近距離の移転・開設者のみの変更 | 同じ県内で直線距離2km以内の移転や、場所を変えずに開設者だけが替わる場合(個人から法人への変更など)で、一定の条件を満たすもの |
| その他 | 上の2つに当たらない引き継ぎ。遡及を希望する日の原則3か月前までに予定届出書を出し、事前に相談する |
この取扱いは、2026年9月1日から新しい通知に切り替わっています。管理者や職員をどれだけ引き継ぐかなどの条件もあるため、譲渡の契約の前に、管轄の地方厚生局に相談しておくのが確実です。
引き継ぐ前の段取りから、一緒に組む
ソクラクは、クリニックの引き継ぎと、一般社団法人での開設を支援しています。廃止と開設、保険医療機関の指定の日程を、空白が生まれない順番で組み立てます。
- 引き継ぎ方は、個人のまま・医療法人・一般社団法人のどれが合うかから考えます
- 保健所と地方厚生局への手続きの段取りをお手伝いします
- 相手が決まっていない段階からご相談いただけます
相手先を探す仲介は行っていません。必要な専門家をご紹介し、全体をとりまとめます。
承継開業の前に、何を確かめておくのか
| 確かめること | 中身 |
|---|---|
| 契約の名義 | 物件の賃貸借、医療機器のリース、業者との契約を、新しい開設者に引き継げるか |
| スタッフ | 誰が残るか。雇用の条件をどう引き継ぐか。遡及指定の条件にも関わる |
| 設備 | 医療機器や電子カルテ、ナースコールなどの年数と、保守がいつまで受けられるか |
| カルテ | 診療録の引き継ぎ方と、保存の責任をどちらが持つかを、譲渡の契約で決めておく |
| 患者さんへの案内 | 院長が替わることを、いつ、どう伝えるか |
設備の更新の目安は、たとえばナースコールならナースコールの耐用年数で書いています。引き継いだ直後に大きな入れ替えが重なると、資金繰りが苦しくなるため、承継の価格と一緒に見ておきます。
よくある質問
承継開業とゼロからの開業は、どちらが早いですか
物件探しや内装、採用の時間を短くできるぶん、承継開業のほうが早く始められることが多いです。ただし、遡及指定の事前相談や契約の名義の切り替えなど、承継ならではの手続きに時間がかかります。譲り受ける時期が決まっているなら、その数か月前から動き始めます。
承継すると、保険診療はそのまま続けられますか
開設者が替わると保険医療機関の指定は取り直しになります。指定日は原則として申請の翌月1日ですが、条件を満たせば、元のクリニックの廃止日にさかのぼって指定を受けられます。条件と手順は地方厚生局ごとに案内されているので、契約の前に相談してください。
個人で開業しているクリニックを、自分の法人に移すときも同じですか
同じです。開設者が個人から法人に替わるため、個人の診療所は廃止、法人が新たに開設する扱いになります。場所を変えず開設者だけが替わる場合は、条件を満たせば遡及指定の対象になります。進め方は個人開業から一般社団法人へにまとめています。
医師でなくても、クリニックを引き継げますか
法人を開設者にすれば、代表者が医師でなくても引き継げます。ただし、診療所の管理者は医師でなければならないため、管理者となる医師を決めてから進めます。詳しくは医師でなくてもクリニックは開業できるかで書いています。
関連ページ
- クリニックのM&A・承継 — 引き継ぐ、または譲る場合
- クリニック開業コンサル・支援 — 一般社団法人で、最短3.5ヶ月で開く
- 個人開業から一般社団法人へ
- クリニック開業の流れとスケジュール
- クリニックの分院展開
参考:医療法(第7条、第8条、第9条)、厚生労働省「保険医療機関等の遡及指定及び機能移転の取扱いについて」(令和8年6月5日 保医発0605第2号)、四国厚生支局・近畿厚生局・東北厚生局の保険医療機関の指定に関する案内(2026年10月26日確認)。運用は地方厚生局によって異なることがあります。個別の判断は管轄の窓口にご確認ください。

