クリニックの開業資金はいくら要るか|内訳・運転資金・調達の考え方

クリニックの開業資金は、「開くまでにかかるお金」と「開いてから入金が始まるまでを支えるお金」の2つで考えます。見落とされやすいのは後者です。保険診療の診療報酬は、診療した月の翌々月に入ってきます。そのあいだの家賃と人件費も、開業資金に含めておく必要があります。
この記事では、開業資金の内訳と、金額が何で決まるのか、どう調達するのかを整理します。一般社団法人で開設する場合に固有の費用にも触れます。

目次

クリニックの開業資金は、何に使うのか

結論から書くと、開業資金は次の7つに分かれます。上の5つが開くまでのお金、下の2つが開いてからのお金です。

内訳中身金額が動く要因
物件の取得保証金・敷金、礼金、仲介手数料、契約時の前家賃立地、面積、保証金の月数
内装・設備工事間仕切り、給排水、電気容量の増設、空調、X線室の遮へい居抜きかスケルトンか、診療科
医療機器診療科ごとの機器、画像診断装置、滅菌器診療科でいちばん差が出る。購入かリースか
IT・什器電子カルテ、レセコン、予約システム、家具、待合クラウド型か、院内サーバーか
開業前の集患・採用ホームページ、看板、内覧会、求人広告どこまで自前で回せるか
運転資金入金が始まるまでの家賃・人件費・リース料・借入返済固定費の大きさと、患者数の立ち上がり
生活費・予備費院長の生活費、想定外の追加工事や機器個人の状況

表の上半分は見積もりを取れば数字が出ます。難しいのは下の2行です。開業資金が足りなくなるのは、たいてい運転資金の見積もりが甘かったときです。

運転資金は、何か月分を見ておくのか

保険診療の収入は、診療した月の翌月に請求し、その翌月(診療月から見て翌々月)に支払われます。開業した月の診療分が手元に入るのは、早くても2か月後です。

月出ていくお金入ってくるお金(保険診療)
開業月家賃・人件費・リース料窓口の自己負担分のみ
翌月家賃・人件費・リース料窓口の自己負担分のみ(開業月分を請求)
翌々月家賃・人件費・リース料ここで開業月分の診療報酬が入る

しかも開業直後は患者数が少ないので、入ってくる金額も小さいところから始まります。運転資金は「月々の固定費 × 患者数が損益分岐に届くまでの月数」で見積もります。固定費の内訳と、患者数の立ち上がりを何か月で見るかは、診療科と立地で変わります。自由診療が中心の場合は窓口で受け取るため、このずれは小さくなります。

開業資金がいちばん変わるのは、どこか

同じ「クリニック開業」でも、金額は条件で大きく変わります。差が出るのは次の3つです。

条件資金が小さくなる側資金が大きくなる側
診療科大型の画像機器が要らない診療科CT・MRI・内視鏡・歯科ユニットなど、機器が中心の診療科
物件居抜き(前の医院の内装・設備が使える)スケルトン(何もない状態から工事)・戸建て新築
診療の形自由診療中心(窓口で入金)保険診療中心(入金が2か月後)

物件の選び方で内装工事費は大きく動きます。物件を決める前に知っておきたいことはクリニック開業の物件の選び方にまとめました。

開業資金の大枠を、先に出しておく

診療科・エリア・保険か自由診療かが決まれば、開業資金の大枠は出せます。物件や機器の見積もりを取り始める前に、全体の枠を持っておくと、どこにお金をかけるかの判断がぶれません。

  • 無料相談のなかで、大枠の試算をお出ししています
  • 一般社団法人で開設する場合の、法人まわりの費用も含めて見ます
  • 物件・内装・機器は、それぞれ得意なパートナー会社をご紹介します

クリニック開業支援について見る

開業すると決めていない段階でも構いません。

一般社団法人で開設すると、何が追加でかかるのか

医師個人ではなく一般社団法人が開設者になる場合は、法人を作る費用が加わります。法定の費用として確実にかかるのは次の2つです。

費用金額払う先
定款の認証5万円公証役場
設立登記の登録免許税6万円法務局

このほか、登記を司法書士に依頼する報酬、診療所の開設許可の申請書類を行政書士に依頼する場合の報酬がかかります。法人そのものを作る費用は、内装や機器に比べれば小さな割合です。

一般社団法人には、「基金」という形で資金を集められる仕組みがあります。基金は返還の義務がある一方で、出資のような持分にはなりません。誰からどのくらい集めるかは、法人の非営利性の設計と一緒に決めます。医療法人との違いは一般社団法人と医療法人の違いで比べています。

開業資金は、どこから調達するのか

自己資金だけで開業資金をまかなうケースは多くありません。組み合わせ方は、だいたい次の4つから選びます。

調達の方法向いている使い道押さえておくこと
自己資金全体の土台。借入の審査でも見られる全額を入れず、予備費として手元に残す分を決めておく
日本政策金融公庫設備資金・運転資金新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は7,200万円(公庫の制度ページより)
民間の金融機関設備資金・運転資金事業計画と収支の見通しの精度で条件が変わる
リース医療機器・IT機器初期の支出は抑えられるが、月々の固定費が増える

借入の審査で見られるのは、事業計画と収支の見通しです。「いくら借りられるか」から逆算せず、「いくらあれば立ち上がるか」を先に出し、そこに調達を当てていくほうが、借りすぎも足りなさも防げます。

開業資金を抑えるところ、抑えないところ

削りやすいのは、内装の仕上げ、待合の家具、最初から全部そろえなくてよい機器です。居抜き物件を選ぶ、機器をリースや中古で組む、といった方法もあります。

一方で、運転資金と予備費は削らないでください。開業後に患者数の立ち上がりが想定より遅れたとき、持ちこたえられるかどうかを決めるのはここです。開業までの工程のどこでお金が出ていくかはクリニック開業の流れとスケジュールに時系列でまとめました。

よくある質問

開業資金のうち、自己資金はどのくらい必要ですか

決まった割合はありません。借入の審査では自己資金の額も見られるため、事業計画とあわせて金融機関と相談しながら決めます。自己資金を全額入れてしまうと、開業後の予備がなくなる点に注意してください。

開業資金はいつごろ準備し始めればよいですか

物件を契約する前です。物件の契約時には保証金などの大きな支出があり、そのあと内装工事、機器の発注と続きます。物件を決める段階で、資金の全体像と調達の目処が立っている状態が理想です。

医師でなくてもクリニックの開業資金を出せますか

一般社団法人を開設者にする形であれば、医師以外の方が法人の運営に関わり、資金面を担うことができます。ただし法人には非営利性が求められ、剰余金を分配することはできません。どういう形で関わるかは、法人の設計の段階で決めます。

自由診療のクリニックでも運転資金は必要ですか

必要です。窓口で入金されるため保険診療ほどのずれはありませんが、開業直後は患者数が少なく、固定費を売上でまかなえない期間があります。その期間の家賃と人件費を見込んでおきます。

関連ページ

出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(融資限度額)。定款認証の手数料と登録免許税は、一般社団法人の設立時の法定額です。制度や金額は改定されることがあるため、手続きの前に各窓口で最新の内容をご確認ください。

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