介護施設の業務効率化は、月末月初に固まった事務作業をどうするかに尽きます。国保連への請求、シフト、勤怠、記録の突き合わせ。同じ人が同じ時期に集中して手を動かしていて、しかもその期間だけ現場に出られなくなります。
ここでは、介護施設の事務作業をどこまでRPA(業務自動化)で機械に渡せるかを整理します。
先に立場を書いておきます。私たちが毎日動かしているのは自院のクリニックのもので、介護施設での導入実績を掲げているわけではありません。ただ、機械に渡せる作業の条件は業種が変わっても同じです。以下は、その条件を介護の事務作業に当てはめたものです。
介護施設のRPAは「毎月おなじ日にやること」から
RPAで機械に渡せる作業の条件は3つです。手順が決まっている・誰がやっても同じ結果になる・かならず発生する。介護施設の月次事務は、この3つがきれいにそろいます。毎月おなじ日に、おなじ手順で、おなじ画面を開いているからです。介護の現場でRPAが効くのは、この領域です。
逆に、ケアの中身に関わる判断は対象になりません。誰にどう対応するか、記録に何を書くか。ここは人が持ちます。機械に渡すのは、判断のあとに発生する事務のほうです。
対象になりやすい作業
| 作業 | いま起きていること | 機械に渡せるか |
|---|---|---|
| 国保連請求データの提出前チェック | 介護ソフトから出した請求データを、決まった観点で1件ずつ見る | 洗い出しまでは渡せる。提出の判断は人 |
| シフト・勤怠の集計 | 希望休を集め、表に写し、勤怠システムに入れ直す | 集計と転記は渡しやすい |
| 記録・書類の転記 | 紙やFAXで受け取ったものを、決まった様式に打ち直す | 様式が決まっていれば渡せる |
| 加算の要件の確認 | 要件を満たしているか、毎月おなじ観点で目視する | 洗い出しまでは渡せる。判断は人 |
| 返戻・過誤の一覧づくり | 返ってきたものを拾い、対応表に並べ直す | 並べ直しは渡しやすい |
| 複数事業所の数字の集約 | 事業所ごとの数字を、1つの表に集める | 渡しやすい |
ここでも「洗い出し」と「判断」を分けます。決まった観点で拾い出すところまでは機械が速く、見落としません。そこから先の「これで出す/出さない」は人の仕事です。
国保連請求まわりで、やることとやらないこと
いちばん相談が多いのが国保連への請求まわりなので、線をはっきり書いておきます。
| お引き受けできること | お引き受けしないこと |
|---|---|
| 介護ソフトから出した国保連請求データを、決まった観点で確認する | 請求そのものの代行 |
| 不足や不整合を洗い出して一覧にする | 加算の可否を機械に判断させること |
| 複数事業所の数字を1つに集める | 介護ソフトそのものの改造 |
| 毎月おなじ様式の資料を作る | ご利用中の製品の規約に反する接続 |
介護ソフトとの接続がどこまでできるかは、ご利用中の製品の規約と接続方法によって変わります。最初にそこを確認し、認められていない場合は、ソフトの手前までを自動にします。データを書き出せる形さえあれば、そこから先はこちらで受けられます。
手を付ける順番
- ソフトの外側にある作業/集計、転記、資料づくり、フォルダの整理。利用者の情報に触れないものから始めます
- 書き出したデータを扱う作業/介護ソフトから出したファイルを読んで、確認し、並べ直す。読むだけなので影響が閉じています
- ソフトへの書き戻し/ここは規約と接続方法の確認が要ります。認められていなければ、手前で止めます
効果の大きい順ではなく、扱う情報が軽い順です。いきなり利用者の情報から始めると、確認事項が多すぎて動き出せません。
よくある質問
介護施設の事務作業は、どこから自動化するのが早いですか
介護ソフトの外側にある作業からです。シフトと勤怠の集計、複数事業所の数字の集約、毎月おなじ様式の資料づくり。利用者の情報に触れないぶん確認事項が少なく、いちばん早く動き出せます。効果の大きさではなく、確認事項の少なさで1本目を選んでください。
国保連への請求も自動化できますか
提出前の確認までです。介護ソフトから出したデータを決まった観点でチェックし、不足や不整合を一覧にするところは機械に渡せます。ただし請求そのものの代行はしません。加算の可否のような判断も機械には決めさせません。人が最後に見る手前までを速くする、という形になります。
いま使っている介護ソフトのままでできますか
ソフトの外側の作業は、多くの場合そのままできます。ソフトへの書き戻しは、ご利用中の製品の規約と接続方法によって変わるため、最初にそこを確認します。認められていない場合は、ソフトの手前までを自動にします。データを書き出せる形さえあれば、そこから先は受けられます。
小規模な事業所でも意味がありますか
むしろ小規模のほうが効きます。事務を担う人が少ないぶん、その人が休むと止まる作業が多いからです。月末月初に事務で手が塞がって現場に出られない、という状態が解けるだけでも意味があります。1本から作れるので、小さく試せます。
担当者しか分からない状態になりませんか
そうならない形で作るかどうかの問題です。何を、どの順で、どこに書いているか。処理の中身と手順書が読める形で残っていれば、担当が変わっても引き継げます。ここは最初の設計で決まります。
最後に
介護施設の業務効率化でいちばん効くのは、大きな仕組みを変えることではありません。判断のあとに発生する事務を、人の手から外すことです。判断は人が持ったまま、そのあとの手順だけを機械に渡す。それだけで、月末月初に事務で埋まっていた時間が現場に戻ります。
いま毎月やっている作業をひとつ挙げていただければ、それが対象になるかどうかをその場でお答えできます。
関連ページ
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