AFRODE CLINIC のナースコールは、市販品ではありません。自分たちで作ったものです。
鉄扉が多く、地下があり、階をまたぐ。この条件で使える製品を探し回った結果、どれも足りず、最後は作るという判断になりました。何が足りなかったのかを順番に書きます。
建物の条件が、そもそも厳しかった
AFRODE CLINIC は、上下階あわせて約20室。地下階があり、区画ごとに鉄扉が入っています。
鉄扉は電波を通しません。扉を1枚隔てるだけで届き方が変わります。そこに階をまたぐ導線が加わります。電波にとっては、かなり意地の悪い建物です。
やりたかったこと自体は単純でした。患者さんがボタンを押したら、スタッフが気づく。ただし、どの部屋からでも、確実に。この「確実に」が難しい建物でした。
製品を探し回って、3つのことが分かった
ひと通り見ました。そのうえで、どれも導入を見送りました。理由は3つです。
1. カバー領域が足りない
まず、届かない。あるいは届いたり届かなかったりする。
カタログ上の到達距離は、遮るもののない状態での数字です。鉄扉が入るとそのとおりにはなりません。ナースコールで「たまに届かない」は、届かないのと同じです。呼んだのに来ない、が一度でも起きると、その仕組みは信用されなくなります。
安定して届かせるには、中継をどこに何台置くかを建物に合わせて設計する必要があります。ところが、そこを柔軟に足せる製品が見つかりませんでした。
2. 周辺システムとの連携が弱い
次に、外と繋がらない。
院の業務連絡はすでに業務チャットに集まっています。シフトも申し送りもそこにあります。ところがナースコールだけは専用の親機と専用の画面を持っていて、そこだけ独立している。スタッフに「もうひとつ見るものを増やしてくれ」と言うことになります。
あとから繋げばいいとも考えましたが、APIが公開されていない製品が多く、それもできませんでした。閉じた仕組みは、閉じたまま使うしかありません。
3. 押し方に、業務を紐付けられない
これが決定打でした。
現場で起きることは、ひと通りではありません。すぐ来てほしいのか、手が空いたときでいいのか、物を持ってきてほしいのか。全部が同じ「呼び出し」として飛んでくると、受け取る側は毎回確認しに行くことになります。
やりたかったのは、押し方によって飛ぶ内容を変えることでした。1回押したらこの通知、2回押したら別の通知、長押しなら別の宛先へ。そうすれば、受け取った側は行く前に判断できます。
この手のカスタマイズができる製品が、ほとんどありませんでした。呼び出しを飛ばすところまでは作られていても、その先の業務に紐付ける部分は用意されていない。
それで、作ることにした
3つ目まで来た時点で、既製品を選ぶ前提を降ろしました。
私はもともとデータの側の人間で、事業会社でグループ全体の分析基盤を統括していました。そこで身についたのは、仕組みを評価するときに「いま動くか」ではなく「あとから足せるか」で見る癖です。ナースコールを探していたときに最後まで引っかかったのも、そこでした。いま鳴るかどうかではなく、来年やりたいことが出てきたときに足せるか。足せない仕組みは、結局どこかで捨てることになります。
山田 慎也
残す要件は4つに絞りました。
- 鉄扉と階をまたいでも、確実に届く(届かせ方を建物に合わせて設計できる)
- いま使っている業務ツールに、そのまま流れる
- 押し方に応じて、飛ぶ内容と宛先を変えられる
- 配線工事をしない
逆に、捨てたものもはっきりしています。詰所の親機は置かない。廊下の表示灯も付けない。電子カルテとの連携も、最初は諦める。この4つが満たせれば運用は回ると決めて、そこだけを作りました。
できたものが、いま工事不要のナースコールとしてお出ししているものです。
いま、鉄扉の向こうからでも飛んでいます
AFRODE CLINIC では、鉄扉のある区画からも、地下からも、呼び出しがスタッフのスマートフォンに飛びます。中継を挟んで届かせているので、配線は一本も通していません。
ボタンは電池式で、Wi-Fiにつながっていれば動きます。置き場所を変えたくなったら、動かすだけです。
作ってから気づいた、2つのこと
導入前には想像していなかった効き方が2つありました。
ひとつは、「誰が対応するか」がその場で決まるようになったこと。専用の親機だと、鳴っているのは分かっても、誰が動くかは声かけで決まります。業務ツールに流れると、通知にそのまま返信できます。「いま行きます」の一言で、他のスタッフは動かなくて済みます。
もうひとつは、記録が残ること。いつ、どの部屋から呼ばれて、誰がどう動いたか。専用システムだとログを見に行く必要がありますが、業務ツールならその日のやり取りとして並びます。あとから振り返るときに、探さなくて済みます。
「呼び出しが届く」よりも、「そのあとどうなるか」のほうが、運用では効きます。作る前は、そこまで見えていませんでした。
同じ条件の施設なら、同じことが起きます
私たちが当たった壁は、うちが特殊だったからではないと思っています。
- 鉄扉、地下、分厚い壁があり、電波が通りにくい建物
- 入院設備はないが、呼び出しは必要な施設
- 業務連絡がすでに何かのツールに集まっている施設
- 呼び出しの種類を分けたい施設(すぐ来てほしい/手が空いたときでいい)
- 部屋の使い方が変わる可能性がある施設
介護施設からのご相談も増えています。有線のナースコールが古くなり、入れ替えると工事が必要と言われた、という入口です。建物の条件としては、私たちが当たったものと同じ構造をしています。
よくある質問
鉄扉や地下があっても、本当に届きますか
中継を挟んで届かせます。AFRODE CLINIC 自体が鉄扉と地下のある建物で、そこで使い続けています。ただし、どこに何台置けば届くかは建物ごとに違います。カタログの到達距離をそのまま当てはめても意味がないので、構造をうかがったうえで台数をお出しします。届くかどうか分からない段階でのご相談で構いません。
押し方で通知を変えることはできますか
できます。もともとこれが作った理由のひとつです。押した回数や長押しで、飛ぶ内容や宛先を変えられます。すぐ来てほしいのか、手が空いたときでいいのか。受け取った側が行く前に判断できると、動き方が変わります。どう分けるかは現場の運用に合わせて決めます。
既製品を選ぶべきケースはありますか
あります。入院病棟のようにベッドサイドの機器と連携させたい場合や、詰所の親機で一括管理したい場合は、既製のシステムのほうが向いています。私たちが作ったものは「呼び出しが届けば足りる」現場のためのもので、それ以上のことはしません。用途が違えば、別の製品をおすすめすることもあります。
LINE WORKS以外のツールでも使えますか
Slack、Microsoft Teams に対応しています。それ以外のツールをお使いの場合もご相談ください。API連携により、電子カルテや勤怠管理システムとつなぐことも検討できます。ただし、まずは呼び出しを届けるところから始めて、必要になってから広げるほうが、運用としては定着しやすいと感じています。
一部の部屋だけで試すことはできますか
できます。1台から導入できるので、まず数室で使ってみて、運用に合うかを確かめてから広げることをおすすめしています。既存のナースコールを残したまま並行して使うこともできます。
最後に
ナースコールを入れ替えるとなると、大がかりな話になりがちです。ただ、必要な機能を並べてみると、意外と少ないことがあります。私たちの場合は4つでした。
要件を削ると、工事をしないという選択肢が出てきます。そして「押し方で内容を変える」のような、既製品では諦めていたことが、逆にできるようになります。
いま何に困っているのかをうかがえれば、そもそも入れ替えるべきかどうかからお話しできます。建物の図面がなくても、階数と部屋数、扉の材質が分かれば見当は付きます。
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